開発ストーリー
ストーリー 3 〜 市場化までの道のりと新素材「みかん混合発酵茶」の開発 〜
1. サンダイとしてプロジェクトへの参画、そして大手販売会社の商品化で全国発売へ
大手企業との商品化プロジェクトが頓挫したことで、振り出しに戻った事業化の道。
生産組合は作った。モノづくりの体制もできた。でも売り先がない。
このままでは混合発酵茶事業の中止・生産組合の解散も目前まで迫っていた。
2013年年末のことだ。
生産組合の組合員の中の一人が自身の親戚が営んでいるサンダイ(大村市)を組合員、行政関係者に紹介したことから新たなステージへと進むこととなる。
サンダイは元々、水産関連の飼料などの卸として大手企業との取引もあった。
食品事業では食品業界のネットワークもあったことから、混合発酵茶の活路が見出せないか…と考えた。
サンダイとしても今後の柱に成長する事業を模索していた時期でもあり、お互いの利害が一致したことから原料の販売契約に至る。
期間は3年!決して資本力が豊富にある訳ではないサンダイは、この新規事業に社運を掛け、全力で取り組む事を条件に原料の販売方法の一任、販売窓口を一本化を任せて頂く事となり、2014年3月に生産組合「ながさき高機能茶LLP」と独占販売契約を締結した。
それから既存ネットワーク先はもとより食品、健康食品業界の展示会や商談会などにも片っ端から出展、飛び込み営業もしたが、世間としては全く認知されていない原料。
どこも門前払いだ。
最初の2年間は全く成果が出ず、いよいよ約束の3年目を迎えようとした時だった。
宮田さんとサンダイの吉野が東京出張に行った際に、運命を変える出会いをする。
健康食品受託企業「アリメント工業」。
一般の方には聞きなれない社名だが、健康食品の業界ではトップクラスの規模を誇る企業だ。
アリメント工業のブースに立ち寄り名刺交換した後日、担当者から「長崎県の発酵茶の取組みに興味がある」ということですぐに長崎に訪問され混合発酵茶のプレゼンを行った。
早速、アリメント工業のクライアントS社に原料提案を行い、企画会議に上げられ企業コンセプトと原料が合うことからすぐに商品化に向けて共同開発を開始するに至った。
そこからも幾度とない試作や製品での臨床試験の期間を得てようやく2016年9月に発売された商品が全国流通に至った。
発売するやヒット商品となり、原料の生産も昨年までの5倍以上の増産となった。
そこから混合発酵茶プロジェクトがまた息を吹き返したのだ。
2. 新たな素材開発
先行して製品化に至ったびわ葉混合発酵茶™だったが、水面下では混合発酵製法を用いた別の素材開発にも取り組んでいた。
時は遡ること2012年、共同研究者の一人、九州大学の松井教授の話で新たな開発プロジェクトが始まった。
「みかんなどの柑橘類に多く含まれているヘスペリジンという成分があるが、多くの効果があるのに水に溶けにくい為、食品にほとんど利用されていない。何か良策はないか…」
当時、糖グルコースを工業的にくっつける事でヘスペリジンの水溶性が向上する製品も出ていたが、この研究プロジェクトではもっと自然的に且つ地域貢献に繋がる方法を模索していく中で、混合発酵製法の活用を検討することとした。
実はびわ葉混合発酵茶の開発当初、検討していた県産植物の中に「未成熟みかん(青みかん)」もあり、特許も取得していたのだ。
ヘスペリジンはみかんやレモンなどの柑橘類に含まれているポリフェノールの一種で、古くはビタミンPなどとも呼ばれていた。
ヘスペリジンは血管や血液を健康にする効果がある成分として世界的にも注目されている健康成分だ。
しかし、ヘスペリジンは水に溶けにくい性質を持っているため、食品や飲料での提供が難しく、また人間の体内では吸収されづらいという課題があった。
そこで研究を進めた結果、ヘスペリジンを多く含む青みかんと茶葉を揉み込み混合発酵すると「茶葉中に含まれるカテキンやポリフェノール類がヘスペリジンに結合」することで水溶性が向上し、体内への吸収効果が高まることが分かったのだ。
びわ葉の時と同様に県と大学が連携を組み、製造方法の条件やメカニズムを解明することとなった。
もともと先行研究でびわ葉混合発酵茶が開発されていたが、今回は着目する成分も原材料も異なるもの。
このヘスペリジンの作用を最大限に引き出す製法や成分メカニズムを解明するために連携した研究を進めた。
ここでキーマンとなるのが、当時農林技術開発センター食品研究室の中山久之さんだ。
中山さんは佐賀大学を卒業後、県庁職員となった中山さんは宮田さんが開発した混合発酵茶の機能性の研究、市場化の体制構築のために各大学や企業との連携業務を宮田さんより引継ぎ、そして発展させてきた一人だ。
中山さんは宮田さんと共にこれまでに2度の国の研究予算、そして現在も継続している県の研究予算を獲得する為に奔走した。
そのおかげもあり、みかん混合発酵茶の動物試験、ヒト試験も含めて実証試験を行い多くの独自データを蓄積してきた。
その研究成果が認められ2016年に行われた第70回日本栄養食糧学会において技術賞を受賞したのだ。
その後もヘスペリジンを使った飲料、健康食品で機能性表示食品に届出するための準備が本格的に始まった。